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ベンダーの立場で読んだ『2時間でざっくりつかむ!中小企業の「システム外注」はじめに読む本』

  • 執筆者の写真: shota murakami
    shota murakami
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分


はじめに


システム開発の現場で、発注者とベンダーの関係がスムーズにいかない場面は少なくありません。契約時には互いに「いい関係で進めていこう」と思っていても、進行するにつれて認識のズレや期待の違いが生じ、気づけば不満が積み重なってしまう――そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。


坂東大輔氏の著書『2時間でざっくりつかむ!中小企業の「システム外注」はじめに読む本』は、そうしたすれ違いを防ぐための基礎知識と心構えを、システム開発に不慣れな発注者向けにやさしく解説した入門書です。


しかし、実際に読んでみると、ベンダー側にとっても非常に示唆に富む内容でした。著者自身が発注者とベンダーの両方の立場を経験しているため、「顧客がどう感じているのか」「ベンダーに何を期待しているのか」が具体的に伝わってきます。


ここでは本書の中で特に印象的だったポイントを紹介しながら、ベンダーの立場から考えた気づきや感想をまとめてみます。




印象に残った3つのポイント


ポイント①「リスクをとってでも発注者を諌めてくれるベンダーこそを、パートナーとして選ぶように」(第23項より引用)


この一文を読んで、自分は顧客にとって本当に信頼できるパートナーになれているだろうかと考えさせられました。ベンダーにとって「顧客にNOと言う」のは大きなリスクを伴います。短期的には契約を失うかもしれません。しかし、顧客にとって有害な選択を見過ごせば、長期的にはプロジェクトも関係性も崩れてしまいます。


耳の痛いことを率直に伝える勇気――これはベンダーにとってプロ意識を示す重要な資質だと改めて感じました。



ポイント②「顧客自身ですら、本当に必要なものを正確に理解できていないことがある」(第26項より)


この指摘は、現場で痛感することのひとつです。顧客が求める要件は、実際には「解決したい課題」の表層でしかない場合があります。そのままシステム化すれば「言われたことはやったのに満足されない」という不幸な結果になりかねません。


ベンダーの役割は、顧客の言葉の背後にある本当のニーズを探り出すことです。つまり、仕様を形にするだけではなく「課題を言語化し、適切な解決策を一緒に練り上げる伴走者」になることが求められます。



ポイント③「ベンダーは発注者の映し鏡だと思って接すること」(第37項より)


この言葉にはハッとさせられました。発注者が主体的に関わらないプロジェクトは、ベンダーにとってもやりづらいものです。しかし逆に、発注者が誠実に取り組む姿勢を見せれば、ベンダーも自然とそれに応えるようになります。


つまり、発注者とベンダーは鏡のような関係にあり、一方の態度が他方に反映されていくのです。ベンダーとしても「相手が積極的に動いてくれない」と不満を抱く前に、自らの姿勢を見直す必要があると感じました。



その他にも、本書には実践的で印象に残るポイントが数多く紹介されています。たとえば、ベンダーの事業所を訪ねたときに「社員がイキイキしているかどうか」が判断材料になるという視点があります。これは、顧客がベンダーの雰囲気から信頼度を見極めているということであり、私たちベンダー自身が職場の空気や働く姿勢を顧客にどう見られているかを意識すべきだと教えてくれます。


また、契約段階でのチェックポイントや、要件定義を進めるうえで発注者とベンダーの認識をすり合わせる重要性、さらにはテストや運用のフェーズで「どこまでを発注者が担い、どこからをベンダーに任せるのか」という線引きについても、具体的に分かりやすく解説されています。



本書をベンダー視点で読む意義


一見すると本書は「発注者のための入門書」です。しかし、ベンダーが読むことで得られる学びは少なくありません。


  • 発注者がどんな不安や誤解を抱いているのかを理解できる

  • 発注者が求める「理想のベンダー像」が具体的に分かる

  • プロジェクトが失敗する典型的なパターンを事前に把握できる


特に、発注者が「ベンダーにこうあってほしい」と考えている像を知ることは、自分の行動を見直すうえで非常に役立ちます。



私自身の気づき


この本をベンダーの立場から読んで、以下の3つの気づきがありました。


  1. 顧客に寄り添う姿勢と、専門家としての毅然とした姿勢を両立させることが大切 単なる「御用聞き」ではなく、ときに諌め、ときに提案するバランス感覚を磨きたい。


  2. 顧客の言葉の奥にある「本当の課題」を見抜く力を養うこと

    顧客が本当に欲しているのは「システム」そのものではなく、「問題が解決された未来」。


  3. プロジェクトは相互作用の産物であることを忘れない

    発注者の姿勢に合わせてしまうのではなく、自分自身が「映し鏡」として良い影響を返せる存在になりたい。



まとめ


『2時間でざっくりつかむ!中小企業の「システム外注」はじめに読む本』は、システム開発の流れを初心者にも分かりやすく整理した一冊ですが、ベンダーにとっても「顧客が何を考え、どんなベンダーを望んでいるのか」を知る格好の教材になります。


今回着目した3つのポイントは、いずれもベンダーが自らの姿勢を省みるきっかけとなるものでした。


  • 発注者を諌める勇気

  • 顧客の真のニーズを見抜く力

  • 発注者の鏡としての自覚


これらを忘れずに日々の仕事に取り組むことで、単なる外注先ではなく「信頼できるパートナー」として選ばれる存在になれるのだと感じました。


本書は、中小企業の発注担当者だけでなく、ベンダーとして顧客と真摯に向き合いたい人にとっても一読の価値があると思います。

 
 
 

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